アペリティフが創りだす、ワクワクする瞬間と有意義な人生。

 「アペリティフとはなんだろう。」最近耳にします。日本では端的に「食前酒」と訳されていますが、食事の前、飲み物(お酒でなくてもいい)と、ちょっとしたおつまみを囲み、団欒のひとときを過ごすって感じでしょうか。アペリティフが始まると皆がテーブルに集まりおしゃべりをします。時には1時間をかるく越えることもあるそうです。一日の出来事、好きな事、政治経済などむずかしい話・・・テーブルに招待された人々がコミュニケーションし、ゆったりとした時間を過ごします。親戚や家族で、友人と集まって、ゲスト呼んで、様々です。
 私達(日本人)には元々そんな習慣がないのであまりピンとこないですが 食事前にスローな時間を楽しむなんてのはいかにもフランスらしいと思いませんか。日本なら時間に負われて「早くごはんを食べなさい!」になってしまいます。ずいぶん前にフランスの女性政治家が「日本人はアリのようだ」と言ったので、日本のお笑い芸人さんが“蟻の着ぐるみを着て抗議をしに行く”なんてのをやっていましたが、日本人はよく働くから「アリ」ではなく、時間にゆとりがなく、よく動くのでそう思ったのかもしれません。
 
 “フランス農務省が昨年から「6月の第一木曜日をアペリティフの日」にしました。”
知らない方も多いと思います。では、ボージョレ・ヌーボの解禁日を知っていますか。そうです11月の第3木曜日、これはニュースにもなる大イベントですが、フランスが定着させたものの1つです。
 日本でも「海の日」や「子供の日」のように、公共イメージの強いものは簡単に想起できます。しかし特定のものをコンセプトにした記念日(!?)を決めるということは、特定の企業に利益を誘導してしまう、という不平等を感じる国民的な感覚が付きまとうので、国主導で決めるというのは、あまり馴染まないのかもしれません。
 もちろんフランスも世界を代表する近代国家であり、前記した国民的な感覚は同様のはずです。それにもかかわらず「アペリティフの日」が出来たのは何故か。それは「アペリティフ」自体にフランス文化に裏付けされた公共イメージがあるからだと思います。
 つまりフランスでは食事を行事として楽しむ国民的な意識があり、アペリティフは元々その流れの中にあったのです。また日本で言うところの非日常的な「(食事の)およばれ」という概念が、日常的に「アペリティフへの招待」として相互にあり、そういった社交文化の中で定着してきたのです。
 食事を楽しむ、生活を楽しむ、人生を楽しむ。まさにアペリティフとはそんな人々が集い、ワクワクする瞬間を共有しよう、というものなのでしょう。

 フランスは新しいものを定着させるのが上手な国です。116年前、反対を押し切って建てられたエッフェル塔が今では世界的な観光名所になっているように、またボージョレ・ヌーボーが世界中で飲まれているように、近い将来「アペリティフの日」も世界的なポピュラーになっているかもしれません。

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