たった一人から始まった善意が国を動かす。

 フランスという国は地理的に相当北に位置するため冬の寒さは大変厳しく、毎年何人もの死者が出ると言われています。家のない浮浪者や失業者が沢山おり、周囲を海に囲まれた島国日本と異なるのは、亡命者や東欧、アフリカの国々からの難民などありとあらゆる窮乏者が数多く存在するという点です。
 さて、皆さんはコリッシュというフランス人をご存知ですか。フランスでは今も知らない人はいないというくらい有名な、80年代に活躍した人気喜劇役者です。彼は1986年にバイク事故でこの世を去り、人々は随分とその死を惜しんだそうです。
コリッシュは誰もが心の中で思っていること、政治や社会に対する不満などを少し皮肉ってジョークにしてしまう。その的を射た発言の面白さから絶大な人気を誇っていました。

 当時コリッシュは、一般聴取者から電話を受けるというラジオ番組を持っていました。
その中で「窮乏している人々はアフリカだけでなくフランスにも沢山いる」という訴えがあったそうです。美食と料理で知られている豊かな国フランスで飢えに苦しむ沢山の人々がいるということにコリッシュはひどくショックを受けました。こうと思ったら必ずやり遂げる性格だった彼は、1985年芸能人仲間に呼びかけ、路上で生活する人々に食事を提供するというボランティア活動を始めました。これが「心のレストラン」の始まりです。
 同じラジオ番組でコリッシュが一般の人々に協力を求めるとたちまち5000人ものボランティアが集まり、最初の冬の3ヶ月間で850万食が提供されたそうです。コリッシュの人気と人々からの信頼の厚さがうかがえます。

 この「心のレストラン」、コリッシュがこの世を去った後もコリッシュ夫人をはじめ沢山の人々が意志を継ぎ、20年経った今でも活動が続いています。現在では4万人ものボランティアに支えられ、2001年の数字では冬の3ヶ月間で54万人を対象に5800万人分の食事を提供したということです。ボランティアの内容も食事だけに留まらず、読み書きや住居の手当て、手仕事の研修など範囲をひろげています。またボランティアの中には定年退職者も沢山いて昔取った杵柄を大いに活用し、経理や仕入の担当をしているということで社会活動としては理想的な形だと言われています。
 コリッシュは生前、この組織が磐石なものになるようにとEC(欧州共同体)に働きかけ余剰の食料ストックを放出させたり、小額寄付でも税金の控除を認めるコリッシュ法を成立させるなどの偉業を残しています。
 「心のレストラン」は多くの人々の「善意の心」というただ一つだけのメニューで人々の命を救うため現在も開店し続けています。

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